IPコレギウム公開セミナー開催報告

下記の通りIPコレギウム公開セミナーを東京にて開催いたしました。

【開催概要】
『SDGs達成に向けた環境技術マッチングの実像と未来』
日時:  令和8年2月13日(金)
場所:  虎ノ門アルセアタワーコンファレンス
参加者: IPコレギウムメンバー(10ヵ国 31名)に加え、日本の知財関係者50人以上

下記プログラムの通り実施しました。
プログラムの講演名をクリックすると、講師の方々の資料をダウンロードすることができます。※共有許可を受けたプログラムのみが対象となります。

   
時間 講演タイトル 講演者
13:30–13:35 開会の挨拶
(一社)発明推進協会 会長 近藤 正春
13:35–14:05 飲用水アクセスが困難な地域の課題に挑む「ヤマハクリーンウォーターシステム」の紹介 ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 企画推進部 クリーンウォーターグループ 長谷川 大起 氏
14:15–14:45 海外人材育成と水処理技術による持続可能な技術提供に挑む日之出産業の取り組み 日之出産業株式会社 取締役 藤田 香 氏
14:55–15:15 (動画上映)ケニア・タナリバー郡における水課題と現地の取り組み Mr. Felix K. Mumba (MIEK, RGE), Ag. County Director – Water, County Government of Tana River(ケニア)
15:15-15:30 Coffee Break
15:30–15:40 (動画上映)植物を活用したグレイウォーター浄化技術「Cyperusfilter」 Mr. Alessio Monteleone, Ms. Sofia Biondi, Mr. Francesco Santangelo (イタリア)
15:40–15:50 発芽率を飛躍的に高める技術で海の環境再生を「アマモの発芽・育成装置及び方法」、海の生きものを守りながらマイクロプラスチック問題を解決 「小魚を巻き込まないマイクロプラスチック回収装置」 明治大学付属八王子高等学校 嘉手納 杏果 さん
15:50–16:40 パネルディスカッション
導入プレゼンテーションRPXアジア株式会社 ビジネスディベロップメント シニアアドバイザー、 JIPA SDGs WGサブリーダー 川村 裕一郎 氏
栗田工業株式会社の取り組み紹介― ケニアとの意見交換を通じて考えたことを交えて ― 栗田工業株式会社 サステナビリティ経営戦略室 知財インテリジェンス部 部長、JIPA SDGs WG委員 今井 周一郎 氏
パネルディスカッション ファシリテーター:RPXアジア株式会社 川村 氏パネリスト:ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 企画推進部 クリーンウォーターグループ グループリーダー 金丸 正史 氏、日之出産業株式会社 藤田 氏、栗田工業株式会社 今井 氏
16:40–16:55 総括 ―可能性を次へつなぐ視点で― IPSEVA ASIA 代表 久慈 直登 氏
16:55-17:00 閉会の挨拶 (一社)発明推進協会 知的財産研究センター長 扇谷 高男

前半のセッションでは、まず、ヤマハ発動機株式会社の長谷川 大起 氏より、自然界の浄化機能を活用したシンプルな構造を採用することで、高性能な浄化能力に加え、現地のコミュニティが自ら維持管理できる持続可能性を実現した「ヤマハクリーンウォーターシステム」についてご紹介がありました。 日之出産業株式会社の藤田 香 氏は、フィリピンやモロッコでの技術協力の実例に加え、「ABEイニシアティブ」などを通じた海外インターン生の受け入れが、現地での信頼できるパートナー構築につながっていることなどについて触れるなど、人材育成・人材支援の重要性についてもお話しいただきました。前半セッションの結びとして、ケニア・タナリバー郡の水・エネルギー担当官であるフェリックス・K・ムンバ氏によるビデオメッセージが上映されました。映像では、同郡が直面している深刻な水インフラの不足に加え、衛生施設の欠如、供給能力の限界、さらには不正取水や維持管理の難しさに起因する財政不足など、多角的な課題が提示されました。

長谷川氏
藤田氏
ムンバ氏

左:ヤマハ発動機株式会社 長谷川氏、中央:日之出産業株式会社 藤田氏、右:ケニア・タナリバー郡/水・エネルギー担当官 ムンバ氏

中盤では、次世代による環境問題解決への挑戦をテーマに、イタリアの高校生チームからはビデオメッセージにて、植物(Cyperus)の根を利用して生活排水を浄化する、低コストなバイオフィルター技術の紹介がありました。 続いて、日本の嘉手納杏果さん(明治大学付属八王子高等学校)が登壇し、ブルーカーボンとして注目される「アマモ」の発芽率を飛躍的に高める装置や、小魚を傷つけずにマイクロプラスチックのみを回収する装置について、自ら取得した特許の内容を交えて発表し、会場からは大きな拍手が送られました。

スタニズラオ・カンニッツァーロ工業高校 ソフィアさん、アレッシオさん、フランチェスコさん、
明治大学付属八王子高等学校 嘉手納さん

左:スタニズラオ・カンニッツァーロ工業高校 ソフィアさん、アレッシオさん、フランチェスコさん、右:明治大学付属八王子高等学校 嘉手納さん

後半のパネルディスカッション冒頭では、ファシリテーターのRPXアジア株式会社(JIPA SDGs WGサブリーダー)の川村 裕一郎 氏より、導入プレゼンテーションとして、特許移転に関する具体的なデータを提示しながら、環境技術移転の困難性、世界的な「水破産」の危機と、社会貢献を継続させるための「稼げるビジネスモデル」の必要性などについてご解説をいただきました。続いて、栗田工業株式会社(JIPA SDGs WG委員)の今井 周一郎 氏による、多岐にわたる同社の技術紹介(宇宙での水リサイクルや、広域的な視点での保全活動など)と、ケニアとの連携模索において感じた「正確な現地ニーズの把握必要性」などについてご発表をいただきました。その後、ヤマハ発動機株式会社の金丸 正史 氏、日之出産業株式会社の藤田 香 氏、が加わり、4名にて、以下のトピックが議論されました。
 ・現地情報の入手とサイト選定の困難さ
 ・信頼できる現地パートナーの選定と管理
 ・「ボランティア」ではなく「ビジネス」としてのマインドセット
 ・企業における事業継続の要因

RPXアジア株式会社(JIPA SDGs WGサブリーダー) 川村氏
栗田工業株式会社(JIPA SDGs WG委員) 今井氏

左:RPXアジア株式会社(JIPA SDGs WGサブリーダー) 川村氏、右:栗田工業株式会社(JIPA SDGs WG委員) 今井氏

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

セミナーの最後には、IPSEVA ASIA代表の久慈 直登 氏より「可能性を次へつなぐ視点」と題し、世界的な課題解決において、知財を「協力のためのツール」として再定義し、広く共有することの必要性、AI時代の到来やポストSDGsを見据え、人々のウェルビーイングに貢献する新たな知財システムの在り方などの提言をいただき、イベント総括として締めくくりました。

IPSEVA ASIA代表 久慈 氏

IPSEVA ASIA代表 久慈 氏

今回のセミナーを通じて、環境課題を抱える「ニーズ側」と技術を有する「シーズ側」を繋ぐためには、技術そのものだけでなく、現地に根差した「人」のネットワークが不可欠であることを改めて実感しました。今回のイベントには、具体的でリアルな実例に加え、海外の現場からの声や、次世代を担う若者のアイディアが加わったことで、国や世代を超えた協力関係の新たな可能性を感じるものとなりました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

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